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守和の観た読んだ観た

上総屋:飯田守和の感想録ブログです。 (リンク先から徐々に転載もしつつ)アレコレと感想を綴っていきたいと思います。

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藤沢周平『未刊行初期短篇 無用の隠密』


『未刊行初期短篇 無用の隠密』
文春文庫
平成24年2月15日読了
藤沢周平before藤沢周平とでも言うべき作品集。つまり我々の知る藤沢周平以前の作品群で、なるほどなぁと。
初めのうちは当然でしょうが見よう見まねとしか言いようの無いものから自身の辛さを吐き出すべく書いたであろうものまで、アレコレ読めます。
まぁあまり楽しくはないんですがね。
個人的には「上意討」が仕掛けとして面白いと思いました。勝手な話ですが後年書き直したものが読みたいものですが…無理な願いですね。
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藤沢周平『麦屋町昼下がり』


『麦屋町昼下がり』
文春文庫
平成21年1月22日読了
最初に書いてしまうと収録された4作は全てタイトルに場所と時刻が付いています。そしてその全てが作中の山場です。つまり読者は予めクライマックスを教えられており、読み進むうちにジワジワとそこに近づいていくのが判る趣向になっています。もちん作品の流れでも感じられるのですが、具体的に明示されていると締め付けられるような緊張感に襲われます。
いやぁ、今までに無かった興奮でした。
4作のどれもが面白かったのですが、共通して言えるのは脇役が鮮やかに印象に残った、というコトでしょうか。以下に既読の諸兄へ話しかけるつもりでまとめてみます。
「麦屋町」では藩随一の遣い手であり、奇行の人として知られる弓削伝八郎。主人公を付け狙うであろう災厄のような存在として描かれるのだろうと思いきや、無茶苦茶な狂犬ではない辺り泣けてきました。
「三ノ丸」では実は男勝りの怪力の持ち主である茂登。なにが良いといって相談事の件に惚れました。
「山姥橋」では特に一人とは選び辛い程ですが、蚤取りとも仇名される大目付の小出徳兵衛は伊藤雄之助以外に無いのではないかしら?黒澤明『椿三十郎』のアレで是非。
「榎屋敷」の小谷三樹之丞には男の純情のようなものも感じられて好ましいのですが、刺客として登場する岡田十内も印象に強く残りました。なにより主人公と斬り合う前の発言が人物に厚みを与えていて良いんですよね。

藤沢周平『又蔵の火』


『又蔵の火』
文春文庫
平成19年2月11日読了
初期短編集だそうで、とにかく陰気臭いコト夥しい。ただ社会主義リアリズム風にメソメソウジウジしていないのでハードボイルド作品を読んでいるような気分させられます(でも違うんだろうな、こんな感想は)。
作者自身の鬱屈した気分が反映されている気がするのですが、どうなんでしょう?
表題作以外の4作品は“やくざ物”とでも言いたくなるジャンルで殺伐とした江戸の街が怖いです。なんだか時代劇や落語で憧れていた街の暗部を見せられた気がしました。
面白いんですけどね、ただ読後感は荒涼としている気が…。
【蛇足】
僕の出身地である鎌ヶ谷(当時は釜ヶ谷)が出て来たのには驚きました。浮世絵などで街道筋を辿り見付けては喜んでいたのですが、こうして小説で出会うとまた別ですね。
ちなみに扱いは“ど田舎”としてでした。そのマンマだなぁ。

藤沢周平『喜多川歌麿女絵草紙』


『喜多川歌麿女絵草紙』
文春文庫
平成22年3月8日読了
好きでアレコレと作品を読んできたものの、実在した人物を扱ったモノはどれも今一つ好きになれませんでした。なんてなく構えているような印象が有るんですよね。
そういう次第であまり期待しないで読んだ本書ですが、裏切られました…もちろん良い意味で。
作品そのものは勿論、面白い。思わず引きずり込まる導入部に始まり場面展開の切れ味の良さ、そしてサゲの見事さとドッシリと残る後味(なんか変な表現だなぁ)。
ただ一番興味深かったのは、歌麿や馬琴が段々と作者の分身になって行くような感覚でした。
未だ目が出ない自分への不安と、それでも追い立ててくる内なる自負。またいずれ書けなくなるであろう不安のようなものが妙にリアルに迫ってきました。

藤沢周平『彫師伊之助捕物覚え 消えた女』


『彫師伊之助捕物覚え 消えた女』
新潮文庫
平成20年10月10日読了
解説に言われるまでも無く「成る程、大江戸ハードボイルド」ってな感じの長編です。かつては凄腕の岡っ引だった主人公が、恩人に頼まれて人探しをしているうちに事件に巻き込まれていく…と言うとイカニモでしょ?
本書はそのイカニモなハードボイルド的世界を、江戸の街に舞台を置き換えて展開しています。
で、感想は…作者にとって新しい挑戦だったらしく、むしろ主人公より作者の方が暗中模索な印象を受けました。
もちろん手練れの藤沢周平ですからそれなり以上の出来なのですが、藤沢周平の域には達していないというか…もう少し削り込んだ方が良かったんじゃないか?と思いました。ちょいと長い気がするんですよね、贅肉はついていないものの。特に体術を使っての格闘シーンは、圧倒的な迫力を持つ剣術描写に比べるとまだまだなんじゃないか知らん。
ただ続きが気になるのも確かです。

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