
『麦屋町昼下がり』
文春文庫
平成21年1月22日読了
最初に書いてしまうと収録された4作は全てタイトルに場所と時刻が付いています。そしてその全てが作中の山場です。つまり読者は予めクライマックスを教えられており、読み進むうちにジワジワとそこに近づいていくのが判る趣向になっています。もちん作品の流れでも感じられるのですが、具体的に明示されていると締め付けられるような緊張感に襲われます。
いやぁ、今までに無かった興奮でした。
4作のどれもが面白かったのですが、共通して言えるのは脇役が鮮やかに印象に残った、というコトでしょうか。以下に既読の諸兄へ話しかけるつもりでまとめてみます。
「麦屋町」では藩随一の遣い手であり、奇行の人として知られる弓削伝八郎。主人公を付け狙うであろう災厄のような存在として描かれるのだろうと思いきや、無茶苦茶な狂犬ではない辺り泣けてきました。
「三ノ丸」では実は男勝りの怪力の持ち主である茂登。なにが良いといって相談事の件に惚れました。
「山姥橋」では特に一人とは選び辛い程ですが、蚤取りとも仇名される大目付の小出徳兵衛は伊藤雄之助以外に無いのではないかしら?黒澤明『椿三十郎』のアレで是非。
「榎屋敷」の小谷三樹之丞には男の純情のようなものも感じられて好ましいのですが、刺客として登場する岡田十内も印象に強く残りました。なにより主人公と斬り合う前の発言が人物に厚みを与えていて良いんですよね。
PR