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守和の観た読んだ観た

上総屋:飯田守和の感想録ブログです。 (リンク先から徐々に転載もしつつ)アレコレと感想を綴っていきたいと思います。

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藤沢周平『よろずや平四郎活人剣』


『よろずや平四郎活人剣』上下巻
文春文庫
平成24年3月7日読了
天保の改革により不景気になっていく江戸の街が背景として効果的。実家の長兄に使われる関係で巻き込まれる改革派の水野(実際にはその配下の鳥居)との暗闘が縦糸ですが、コレが適度に緩く良い感じです。
歴史的事件に絡めての連作だと赤穂事件に絡めた『用心棒』の方が通りが良いかもしれませんが、アチラが多少無理を感じさせるのに対し、本作はソレを感じさせません。まぁ多少緩すぎる気がしなくも有りませんが。
個々の事件ももめ事仲裁という設定のおかげで、時に殺伐とする縦糸の緊張感を緩和させるモノがあり愉快です。脇役も達者な演技派ばかりで素晴らしい。ただ後半は縦糸がやや緩くなり過ぎ、終盤になると帳尻合わせのように急伸するのが残念ですが。
伸びやかな気持ちになれてお勧めです。
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藤沢周平『闇の梯子』


『闇の梯子』
文春文庫
平成21年1月25日読了
悪くは無いけどやはり初期の作品は辛い。
町人モノは(社会派リアリズムという用語が正しいかは判りませんが、その臭いがプンプンして)コレでもかと陰気な気分にさせられます。そして暗いだけで救いが無い…別に無くても良いんですが、そういう時期の作品だと知らないで読むと陰惨な気分にさせられます。
武家モノも収録されていますが、コチラは娯楽性の欠片が見られます。ただしまだ充分にこなれていないので食い足りない気分にさせられたりもします。
文庫で適当にパラパラと読み漁るのも楽しいのですが、発表順に纏められた全集で変貌していく様を味わえたら違った楽しさがあるかなと思わせられました。もっとも編集が難しいでしょうけどね、長期に渡る連作なんか入ってたりしたら。

藤沢周平『闇の歯車』


『闇の歯車』
講談社文庫
平成21年9月27日読了
偶然同じ飲み屋の常連になった四人の男たちが、それぞれの事情からある犯罪計画に引きずり込まれていく。
彼らを誘い込んだ男は凄腕で、犯行は成功したかに思えたが…と言うお話。
コレを原作に現代劇も可能だな…と思いつつ読んだのですが、自分の思い違いに気が付きました。
考えたらなんら斬新ではないんですよね。もちろん先が読めてつまらないなどと言うコトはなく、面白いのですが。
いやむしろ非常に面白い。
展開に奇をてらったところが無いだけに(しかし充分にサスペンスとしても楽しめる)、人物描写などがシッカリしていないとトンだ駄作になるところですが、本作はソレがキチンとしています。故に安心して読めます。
原作にして現代劇を、という考えが間違いだとしたのはコレが理由です。
別に現代劇だから不適というのではなく、主眼が犯罪計画その他にズレる危険性が有るから改変はすべきではない、と思ったんですよね。やるのなら映画かなぁ、黒澤明ばりの演出で。

藤沢周平『静かな木』


『静かな木』
新潮文庫
平成20年12月2日読了
作者最晩年の…という言葉がなるほどと言う作品集。脂が落ちてます、残念ながら。
それでも面白いのは確かですが、やや腰が据わっておらず息切れが感じられて寂しく感じました。ソレを傷としいなのはさずかに手練れと思うのですが、しかしなぁ。
ただ本書収録の表題作と「岡安家の犬」の2編はドラマ化などしたら面白くなるのではないかと思います。作者が余白を多く残してくれたので、そこに創造の余地が多いに有ると思うので。

藤沢周平『霜の朝』


『霜の朝』
新潮文庫
平成22年3月20日読了
僕自身は考えていないのでこう言うのはナンですが、小説を書こうと思っている諸兄には本書を一読するコトをお勧めします。
その味わいは多彩で、例えば体言止めとでも言うべき物語の切り上げ方。起承転結の「け」で終わるなんてかなり絶妙な作品が有ります。読後の余韻は香りとしてではなく脈拍として残る感じです。またいきなり緊迫した状況に読者を突き飛ばし、走りながら周囲が見えてくるような構成は短編の手本たり得るように思います。
他に回想を入れての一幕物も有り、組み立てだけでも面白いのですが更にテーマも色々で純粋に読み物としても楽しめます。
やはり氏は短編が持ち味を発揮出来るのではないかしらん?

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