
『五番町夕霧楼』
角川文庫
平成23年1月10日読了
良いのだがナンとも捉えどころの無い感じで、誰かに内容を聞かれたら説明に困ると思いますね。
金閣寺放火事件を題材にしているのは確かですが、果たしてそれがメインかと言うと違う気がします。確かに起承転結の“転”に当たる大きな事件ですが、例え現実にそれが起きていなくても同じような展開になったんじゃないかしらん( もちろん同事件をきっかけに着想は得たのでしょうが)?
またヒロインの夕子についても捉えどころの無いキャラクターであり、かつ作者が内面に踏み込まないので他の登場人物と同様に読者はヤキモキしたりするばかりです。
ただ登場人物たちの気持ちは皮膚感覚で伝わってきます。ラストは美し過ぎないのが美しい。やはり良い作品ですよね、今更僕の言うまでも無く。
個人的に残念なのは事件以降の流れを新聞記事の引用と言う形で描写している点で、それまでの淡い水彩画の味わいが急にゴチャゴチャした新聞の切り抜き帳のように感じられて違和感を覚えました。まぁ他に手を考えつくかと言うと僕なんぞには無理ですが。
それにしても昔の紹介分は自己陶酔していないか?一読するに印象をまるで当てていない気がするのだが…。
【関連作品】
『金閣寺』三島由紀夫:同じ金閣寺放火事件を扱っています。
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