
『策謀と欲望』Devices and Desires
訳:青木久恵
ハヤカワ・ミステリ1559
平成19年6月10日読了
まさに「小説を読む」行為が楽しめる作品。
ポケミスの一冊なのでミステリーだと思って読み始めたのですが、むしろミステリー的要素の強い文学作品と言って良いのではないでしょうか?あまり文学とかって分類は好きではないのですが。
確かに解説によると作者は〈ミステリの女王〉だそうですし、連続殺人鬼の凶行で物語りは幕を開け一つの殺人事件を中心に話は進みます。そして結末に至るまでに各登場人物個々の視点からなる多面的な描写で読者として事件の真実を推理する楽しみは有ります。
でも読後に残るのは手の込んだトリックの見事さとか結末の意外性などではなく、むしろ殺人事件が地域社会や人々に及ぼす影響についてであり、人生はそれ以前にもありそして以後も続くというコトでした。
蛇足ですが高校くらいのころに読んだ大岡昇平の『事件』を思い出しました。密室だアリバイだの知恵比べだけがミステリーではなく、“純文学”と娯楽は共存出来るのだと感動しましたっけ。
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