
『日日平安』
新潮文庫
平成22年4月3日読了
表題作は黒澤明監督作品『椿三十郎』の原作なのですが、映画とは真逆の面白さです。違いを楽しむのも一興でしょう。映画化とはこういうもんだ、と個人的には感動しています。
再読して思ったのは、基本的にハッピーエンドだなというコトです。少なくとも運命や社会の理不尽さに身悶えするような結末はありません。
似たようなジャンルの藤沢作品と比べて意外性に乏しいとも言えますし、現実味に欠けるとも言えます。しかしその分安心して読めるのも確かで、特に寝る前には適しています。この辺りは創作の動機や発表当時の読者層の違いが原因かしらんと。
また藤沢作品との比較で言うと文章表現の違いにも興味深いものが有ります。例えば風景について言えば山周が絵画だとすれば藤沢は写真のイメージ。前者が表現にも技巧を凝らそうとするのに対し、後者は手を加えるのではなく如何に写し取るかに心を砕いているように思われます。
場面転換のタイミングや食べ物に対する書き込みの度合いから、なんとなく舞台劇と映画の匂いをそれぞれ感じるのですが、コレって作者の世代なんかにもよるのかな?と。
以上、感想から逸れてしまいましたが思うコトをつらつらと。今や藤沢周平に駆逐された観のある山本周五郎ですが、もっと読まれて良いのになぁと思われます。捨てておくには惜しいですね、多少お説教臭いけど。
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