
『酸素男』TheOxygenMan
訳:松下祥子
ハヤカワ文庫
平成22年2月27日読了
描写がシッカリとしていて読み応えが有ります。行間と言うか描かれていないシーンも観えるようで、自分が物語の中に居るような、それ以上に物語の空気にねっとりと包まれているような緊張感が有ります。サラサラと筋を追うような走り読みには向いていませんし、許されない文章だと思います。
ただ作品としてはかなりシンドイ。
今とは違う自分になりたいとはガキの頃には誰でも思うコトなのでしょうが、そういう思いを持ちつつ、自分にふさわしく感じられない場所でもがく高校時代のエピソードは痛々しいほどです。そしてその時のボタンの掛け違い、または別れ道での誤った選択が未だに膿を出し続ける傷のようにジグジグと痛み続ける現在もまた辛い。
この二つの時代のエピソードが交互に描かれ最後に全体の構図が見えてくる…という仕組みもですが、なにより作品そのものの力で惹きつけられ、辛い話なのに目が離せません。
一つだけ不満を言うと訳者はアメフトに疎いか、少なくとも好きではないのではないかしらん?読んでいて判り辛かったので。
このまま映画にしても面白いんじゃないでしょうか?監督はショーン・ペンで(そういえば『インディアン・ランナー』もきつかったなぁ)。
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