
『魔術師 三原脩と西鉄ライオンズ』(全二冊)
小学館文庫
平成19年6月2日読了
著者は本来経済関係が専門だそうで、なるほど西鉄など親会社の経済状況やその社会背景を分析しているのは非常に面白い。今まで読んだ単純(または純粋)な野球関連の本ではなかったであろう視点で大変勉強になった。また丹念に史料に当たっているので2リーグ分裂に関しても判り易く、知らなかった事実を教わり興味深かった。
ただ残念ながら著者の関心が散らかっていて読後感はスッキリしない。
書きたかったのは人間・三原脩なのか、また西鉄ライオンズ時代を中心とした三原脩伝なのか?それとも副題の通り三原脩の率いたライオンズなのか?
それならばもっとピントの合った作品となっていたはずなのだが、惜しむらくはそれらに加えて三原が理想としたであろうプロ野球像(球団は独立採算で成立しており本社の勝手にされない、など)やジャイアンツ(筆者は頑なに“巨人軍”と書くのだが何故か?)ひいては読売との因縁について拘泥し過ぎている為に後半は読み辛い。特に大洋時代と西鉄の“黒い霧事件”に関しては「仕方が無いから書いている」という感じに受け取られ、やや不快ですらある。
特に現在のプロ野球の状態、特に問題点全て読売が根源であると言うのは単純に過ぎる気がする。
加えて言うとやや用語にも首を捻る点があり、もっと厳しい編集者が居てしかるべきではないか?例えば「ゴールド・スター(現、千葉ロッテ)」や「パシフィック(のちの大洋、現・横浜)」(上巻172ページ)はイカガナモノカ?
いずれも外れては居ないが正確と言うには大雑把に過ぎ、特に後者の場合は「パシフィック」は数度の名称変更を経て「松竹ロビンス」になった後、大洋に吸収されている(故に現在の横浜球団の成績に松竹のソレは含まれていない)という状況を考えると、むしろ間違いとして訂正が必要なのではないかと思われる。
【関連書籍】
『球団消滅 幻の優勝チーム・ロビンスと田村駒治郎』中野晴行
『三原脩の昭和三十五年 「超二流」たちが放ったいちど限りの閃光』富永俊治
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