
『贖いの地』Red Hook
訳:北沢和彦
新潮文庫
平成19年7月10日読了
形はミステリーですが肯定的な意味で言うと、違います。
ニューヨークを舞台に殺人事件を追うベテラン刑事…と雑に設定を書くとモロですが、そういう設定というだけで実際はもっと多面的。自分の父親を反面教師にして息子に接していたつもりが離婚して家庭そのものを壊してしまった主人公と、父親との付き合い方が判らない息子の関係がまず微妙。更にこの二人を中心に様々なタイプの登場人物が出てきますが、全てに体温が感じられます。
読み物としてはどうか、と言うと所謂ミステリーの王道としてのソレとは違いますが謎解きもちゃんと有りますし、「あ!」と思わせられる仕掛けも幾つか有ったりします。こういう“娯楽”も有るのだという感じですね。
ただ全体に抑制の効いた描写であり、作者の(ほぼ全ての)登場人物に対しての愛情や好意が感じられるので、この辺り「地味で食い足りない」と思われる方も多かろうと思います。
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