
『吉原手引草』
幻冬社文庫
平成24年2月12日読了
全盛期に忽然と姿を消した花魁葛城について関係者が語るのを縦糸に、吉原について細かく紹介されています。この構成が巧みで、なるほど選考委員も直木賞をあげたくなるだろうなぁ…というのは穿ち過ぎでしょうが。賞のコトはよく知らないしね。
前者はタブーを聞き出そうとする聞き手の探索と神隠しの真相が興味深いミステリーですが(密室トリックの類はなく作者はあっさりと手の内を見せています)、一番の魅力は葛城のキャラクターでしょう。エピソードの一つ一つが良い。
後者は落語や映画、小説などではお馴染みである吉原の裏事情が読めて面白い。特に何故そこに「落ちた」のかを語る前半の登場人物たちの語りは独立した作品になりそうで、贅沢な限り。
…とまぁ誉め始めると切りが無くなりますが、絶賛は他の方に任せるとしてへそ曲がりらしく不満を以下。
いきなり残念なのは一人目の語り手に解説させ過ぎているコトで、博物館の展示解説を読む煩わしさ。先頭打者に初球ホームランをくらって先制された気分で、いきなり割り引いてしまいました。個人的にはプロローグとして、吉原の大門を潜るまでの案内役が居てくれればなぁと。歌舞伎で言えば花道を通ってユルユルと、ですかね。映画ならタイトル前に…諄いか。
文句は言いつつ楽しんで読めたのは確か。久々に他の作品が読みたい作家を見付けました。
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