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守和の観た読んだ観た

上総屋:飯田守和の感想録ブログです。 (リンク先から徐々に転載もしつつ)アレコレと感想を綴っていきたいと思います。

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吉村昭『鯨の絵巻』


『鯨の絵巻』
新潮文庫
平成23年9月11日読了
氏の作品、こと歴史小説に関しては長い道をジリジリと這うような描写が好ましく長いほど良いと思っていますが、創作の短編も素晴らしいのだなぁとウットリしました。もっとも創作と言っても舞台となった世界をかなり下調べをしたであろう作品ばかりですが。
明治以降に近代化されていく鯨漁、錦鯉の養殖、奄美大島におけるハブ漁、更に蛙量まで…と、いずれも僕には馴染みの無い世界なのでとにかく惹きつけられました。そして読み進むうちに登場人物たちの心情も身近になって行きます。
どれも決して饒舌な作品ではないのですが、登場人物の顔に刻みこまれた皺の一つ一つが実に雄弁で、小説を読む楽しさに酔いました。
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吉村昭『海軍乙事件』


文春文庫
平成20年12月10日読了
作者を僕の大好きであり扱っているテーマも興味深いものなのに、どうして面白くなかったのか?と首を捻りつつ読み終えました。
判らんなぁ?
なんか切れ味が鈍っている気がするのですが、気のせいでしょうか?本来ならば長編になる筈が、史料やらナニやらが不足して短編に流されたような気がしなくもありません。映画で言ったら“Making of…”のような扱いになるのではないかと。
更に蛇足を言うと大きめの活字は似合わないような気がします。
勝手なイメージですが、蝋燭の薄明かりの中でかすれ気味の声で淡々と、しかし目は瞬きをせず脳みその皺を数えそうな鋭さでコチラを見据え、事実のみを語るような雰囲気が氏の作品に迫力を与えていると思います。それに合うのはチと前のような文字の大きさと数ではないでしょうか?
そういえば鴎外(←なんだこの字?)の『舞姫』も父親の持っていた全集で、旧仮名遣いの旧漢字で読んだ方が味わいが有ったように思います。…そう言いつつ古典は読めず、海外小説は翻訳に頼りきりなのですが。

吉岡忍『墜落の夏 日航123便事故全記録』


『墜落の夏 日航123便事故全記録』
新潮文庫
平成20年5月30日読了
副題の内容を期待すると正直裏切られます、僕もまたその一人ですが。
事故の発端から経過、そしてその後の出来事などについて書かれているのかと期待したのですが、むしろ著者の関心は事故を取り巻く社会状況の象徴として捉える方向に進んでいる様子でした。ただそれには事故後1年程度ではまだ時期尚早だったのではないか知らん?
もっともつぶさに事実を調べ上げるにしても1年では不足でしようが。
ただ僕の期待や嗜好と違うというだけで面白い本だとは思いました。
【関連作品】
山崎豊子『沈まぬ太陽』本書で扱った日航123便事故をネタにしていますが…酷い出来でした。

スティーブ・ヤーブロウSteveYarbrough『酸素男』TheOxygenMan


『酸素男』TheOxygenMan
訳:松下祥子
ハヤカワ文庫
平成22年2月27日読了
描写がシッカリとしていて読み応えが有ります。行間と言うか描かれていないシーンも観えるようで、自分が物語の中に居るような、それ以上に物語の空気にねっとりと包まれているような緊張感が有ります。サラサラと筋を追うような走り読みには向いていませんし、許されない文章だと思います。
ただ作品としてはかなりシンドイ。
今とは違う自分になりたいとはガキの頃には誰でも思うコトなのでしょうが、そういう思いを持ちつつ、自分にふさわしく感じられない場所でもがく高校時代のエピソードは痛々しいほどです。そしてその時のボタンの掛け違い、または別れ道での誤った選択が未だに膿を出し続ける傷のようにジグジグと痛み続ける現在もまた辛い。
この二つの時代のエピソードが交互に描かれ最後に全体の構図が見えてくる…という仕組みもですが、なにより作品そのものの力で惹きつけられ、辛い話なのに目が離せません。
一つだけ不満を言うと訳者はアメフトに疎いか、少なくとも好きではないのではないかしらん?読んでいて判り辛かったので。
このまま映画にしても面白いんじゃないでしょうか?監督はショーン・ペンで(そういえば『インディアン・ランナー』もきつかったなぁ)。

山崎豊子『沈まぬ太陽』


『沈まぬ太陽』全5冊
新潮文庫
平成20年6月6日読了
酷い出来でビックリしました、これが売れただけでなく評価も高いなんて信じられないなぁ。
まず文章に味が無く、読んでいて歯ごたえと言うか読後の充実感というか、そういうものがまるで無い。偏見の誹りを覚悟で言うと新聞記者ならではの書き捨て文章で、とても文章表現を生業にしている人間の提供するレベルではない。
話の展開もまたお粗末。「アフリカ編」では過去と現在を行ったり来たりするのですが、未整理なまま書いている気がします。読んでいてこんがらがるもの。結局文章に惹き付けられるモノが無いのでコチラの集中力が散漫になっているんでしょうけど。
続く「御巣鷹山編」では事故の緊迫感などは一切無く、ただ取材して得たものを垂れ流しているだけでした。感動した方も多いと聞きますが、ソレってこの小説にではなく引用された資料に対してなんじゃないか知らん?トドメの「会長室編」に至っては人間関係などがグチャグチャ。とにかく思い付きで書き散らかしています(そうとしか思えない)。
そして全ての話に説得力が無い。
作者本人の言によると「この作品は、多数の関係者を取材したもので、登場人物、各機関・組織なども事実に基づき、小説に再構成したものである」んだそうな。
それにしちゃあ、お粗末に過ぎなくないか?
一所懸命に勉強し資料も相当集めたのでしょうが、まるで未消化のまま垂れ流している感じです。読んでいて体温が無いんですよね、まるで借り物。覚えたての単語が上滑りしています。アーサー・ヘイリーの凄さが判りました。それだけは収穫。
とにかく大分なページの割りに薄っぺらな作品で、『白い巨塔』よりも更に酷い出来でした。もう船場モノ以外は読まない方が懸命ですね、少なくとも僕は。
【余談】
ネットで検索して知ったのですが、前述の通り本作は「この作品は、多数の関係者を取材したもので、登場人物、各機関・組織なども事実に基づき、小説に再構成したものである」と作者がわざわざ断っているが為に批判され論争も有ったそうな。曰く“事実に基づき”と言いつつ経歴からソレと判るモデルが登場人物とはまるで異なる、曰く取材は一方的で他方の意見には最初から耳を貸していない等々。「日航側が取材を拒否した」と言いますが、先入観でガチガチの相手なら避けたくもなるわなぁ。
作中での主人公は純粋に英雄でありその仲間は善意と誠意の塊であると描きつつ、対立する会社側の人間は爬虫類だのナンのと軽蔑すべき完全なる悪党(作者の好きな表現で言うと魑魅魍魎)として描写されているのですが、なるほどココまで悪し様に言われて挙句にコレが事実であるなんて言われてはモデルとされた方はタマランよなぁ。
更に他の人はこの辺りどう思っているのかと興味が湧いたので、再びネットで感想を探してアレコレ読んだのですが、ノンフィクションとして読んでいる方が結構いらっしゃいます。
また「作者がナンと言おうと所詮は小説であり、つまりフィクションである」と判った上で感想を書いている方もおられますが、そういう方ですら物語の舞台である国民航空を日本航空だと書いています。
つまりフィクションであると言いつつ実在の日本航空として読んでいるのであって、結局は作者の思う壺にハマっているのではなかろうか?
確かに未曾有の事故を起こし多数の人命を失わせた会社の責任は重いですし、遺族の悲しみはどれほど想像しても及ばないとは思います。また昨今の遺品の取り扱いに関しての報道(遺族の意向を無視して勝手に焼却しようとしていた云々)も、酷い会社だと思わせて余りあります。
しかしソレとコレとは話が別では無いですかね。そういう会社に対してならばどんなコトを書いても良いのか、と疑問が残りました。
航空会社に人間愛を求めるのも結構ですが、自分はどうなんでしょうか?
【関連作品】
吉岡忍『墜落の夏』コッチを読めば充分…かも。

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