
『人間の絆』全4冊 Of Human Bondage
訳:中野好夫
新潮文庫
平成21年3月26日読了
本書を初めて読んだのは、まだ自分の可能性について妄想逞しかった大学時代でした。
前半はまるで自分のように薄気味悪く読み(共感と言うのではなく)、更にやることなすこと失敗する後半では自分の将来を暗示されているようでした。更に主人公が最後に達する人生観に脱力し、毒気を抜かれてしまったものでした。
まぁナニかに熱中し没頭するタイプではない、それゆえに大成は覚束ない人間だ…と僕自身のことを悟らせてくれたとも言えますが。
さて今回、執筆時の作者と同年代になって読み返してみた訳ですが、更に自分に似ているのが恐ろしい。無意識のうちに似たような性質になってしまったのか、主人公のグダグダぶりには鏡を見るようでゾッとしました。
最後の最後は僕とは少々異なりますが、さて書かれていない残りの人生を僕(と彼)はどう生きていくのか?本書を読み終えて、初めて自分の足で歩き出すように思われました。
【追記】
ちなみにネットで他のヒトの感想を散見したのですが、純粋に小説として読み低い評価をつけているモノが多々有りました。
ダラダラ長くて読み辛い云々がその主たる理由であり、確かにグダグダで山場もナニも有りません。
ただ本書は『坊ちゃん』や『舞姫』と同じ系統で、作者が自分の精神をスッキリさせる為に書いたのだと思って読むと違った面白さが有るのだとは、言わせて頂きたい。
【関連作品】
『お菓子と麦酒』
本書と同様に作者の少年時代を投影した人物が登場する作品です。同じ舞台も出てきますし。
自分の作品の為に他人を好き勝手に素材にする文筆家を皮肉る描写がドチラにも有るのですが、そういうモーム自身『月と六ペンス』でやっちゃってた気が…?
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