『夜来たる者』The night-comers
訳:瀬田貞二
ハヤカワポケットミステリー362
平成28年4月5日読了
非常に面白かった。さすが“僕の”アンブラーだぜっちゅう感じです…そりゃ言い過ぎだけど。
東南アジア某国でのクー・デタを舞台にしているのですが、物語として完成しているので発表当時にどれだけの迫真性が有ったのかと。もっともしっかりとした"物語"なだけにフィクションと済まされていたかもしれませんが…フィクションなんだけど。
解説でも触れていたが、読みながらグリーンの『おとなしいアメリカ人』を思い出した。本書の中のスパルト少佐を主人公にした作品を、誰か書きたくなるだろうなぁ、僕だって読んでみたい。もっとも開高健が『…の闇』で『おとなしいアメリカ人』のキャラクターを使ってるんで、やり辛いかもなぁ。
タイトルの由来が判ると物語の深みが増し、作者への尊敬の念も増そうと言うものです。その辺りは是非ご一読を、としか言いようがありませんが。
ところでヒロインの父親が死んだのは日本軍の捕虜収容所だった、というのは説明を簡単に済ます為の嘘で、真相は違う。反乱軍に言わせると旧宗主国であるオランダを追い出したのは日本軍であり、今の政権は権力を掴み易い場所に居合わせたに過ぎない存在である…などは、フィクションとは思えないリアルさではないか。特に前者など国内の複雑な事情から“死人に口無し”とばかりに全て日本軍のせいにしていたら次の世代がそれを真実と思い込んで…なんて、怖過ぎるって?
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