『ハマースミスのうじ虫』The Hammersmith Maggot
訳:霜島義明
創元推理文庫
平成24年12月20日読了
なんとも不思議な作品で、面白いと断言し辛い…面白いんですけどね。
発端は文句なく面白いのですが、そこからが微妙。
まず容疑者を炙り出すのが簡単に思われ拍子抜けします。主人公が安全過ぎるのも残念で、読者をハラハラさせるチャンスを放棄しているかと。
そして最後の対決も“人権派弁護士”が舌なめずりするであろう手段です。
ただ作者の書きたかったであろう点を推測するに、それらは枝葉末節なのでしょう。
個人的には恵まれた環境に生まれ育った主人公が、そうではない犯人を調べていくウチに自分たちの階層への憧れが動機の一つであると知る展開は、作者にも似たような経験が有ったろうと推測されて興味深い。
もっとも作者自身が自分の上下いずれを見てかは判りませんが。
エピローグに当たる最後の2ページが絶妙な余韻を残します。
ヒッチコックが映画化したらと思いながら読みましたが、彼だったらこのラストは無いかなと(むしろ映画『冷血』のラストシーンが浮かびました)。
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