
『珍品堂主人』
中公文庫
平成24年7月27日読了
これでも文学少年でしたからご多分に漏れず太宰なぞ読んだものですが、その頃の僕にとって井伏鱒二と言うと太宰を世話しては裏切られていた爺さんでした。いやそれもそうらしいという程度です。
それが大人になって作品を読んでみたらこんなに面白かったのかと驚いた訳です。ちょうど同窓会で再会してみたら学生時代は地味で陰気に思っていた女の子が、艶っぽい良い年増になっていたようなもんだ。もっとも同窓会になんか縁は無いが。
…などと下手な模倣をしつつ絶賛してみましたが、実際その通りに面白い。語り口が絶妙で骨董についても判ったような気にさせるんだから怖い。小沢昭一の朗読で聴いてみたいなぁ。
話としては人生を遊ぶ主人公が、器用貧乏と評されるママに実務的な連中に利用され、一時の夢を見る…だけ。しかしその辺りが絶妙たる所以で、精魂込めて軌道に乗せた事業から追い出された割に人生に絶望しきっていないのが良いんですよね。ま、仕方無ぇなぁというのがね。
こういう姿勢も“有り”だよね、と…と思うのも既にオッサンだからかなぁ。
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