
『真昼の悪魔』
新潮文庫<
平成21年9月7日読了
作中度々カミュの『異邦人』に触れていますが筒井康隆『乱調文学大辞典』による同書の項目同様、本書もまた「一種の犯罪小説」としては「失敗」の部類に入るでしょう。
結核と診断された大学生の難波は、入院した女子医大で連続して起きる奇怪な事件の真相を追究しようとするが…とは言うものの、探偵役としての彼は受動的過ぎ知恵が無い。パートナーと言うべき、やはり入院している父親の付添いをしている芳賀もまた顔が無い。
犯人は4人の女医のうちの一人の筈である…という難波たちの推理は当たっており、前半は二人の話と交互に正体を伏せた女医の心理と行動が語られているのですが、読者は“犯人当て”の楽しみを与えられません。なにしろ4人についての紹介がほとんど無いので区別がつかないに等しい。
また最初と最後に出てくる神父が現代社会における悪魔について語っているから、とホラー・オカルトとして読もうとしても取って付けたようであり、そちら方面のファンの方には食い足りないどころではありますまい。
現代社会への警鐘や告発、現状に対する憤りなどが力強く訴えられている訳でもなく、同じ著者の『醜聞』ほどにドンヨリとした不安感や不吉な影が有る訳でもない。
朧な記憶を手繰るに『海と毒薬』の読後感に近い気がします。書けるかと思い始めてみたものの、まだ自分の中で整理し切れておらず宙ぶらりん…というような。
誰かもう少し下品にリメイクしてくれないかしらん?埋没させるには惜しい面白い仕掛けが有るんだけど。